古民家リノベーションとは?新旧の美が共存する新しい価値創造へ
古民家のリノベーションが、注目されています。例えば富山県では、築200年の古民家をリノベーションしたアートホテルが話題です。また和歌山県でも、築140年以上の古民家のコンセプトホテルが人気です。
日本の古都京都では、40件以上の古民家カフェが人気を集めています。その多くは築50~250年の建物で、もともとは京町屋や揚屋、銭湯、お茶屋さんでした。それらの歴史ある建物が、カフェという新しい息吹を吹き込まれ、再生しているのです。
このように、古民家リノベーションは日本古来の伝統的な空間や様式をそのまま活かし、快適な現代仕様にすることができます。
本記事では、古民家リノベーションの魅力や事例を解説します。
目次
1. 古民家の概要
1-1. 古民家とは
古民家とは、築年数が相当数経過している日本の住居のことです。厳密な定義はありませんが、目安として建築後50年以上経過した建物を指します。例えば国が制定する文化財登録制度では、築後50年以上の建築物が対象です。
また一般社団法人全国古民家再生協会は、「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた『伝統的建造物の住宅』すなわち伝統構法とする」と定義しています。
1-2. 古民家の特徴
一般社団法人全国古民家再生協会は、古民家の特徴を定義しています。それは、「茅葺屋根や草葺屋根、土間や太い梁のような特徴があるもので、なおかつ築50年以上経っているもの」です。
土間とは、床板を敷かない家屋内にある空間です。地面のままか、三和土にされており、玄関近くに設けられています。
2.古民家リノベーションについて
2-1. 日本家屋の魅力を維持できる
古い日本家屋には、独特の魅力があります。例えば日本家屋の外観は、和瓦を使った切妻屋根や寄棟屋根の落ち着きのある佇まいがあります。
また縁側は、室内と屋外をつなげてくれる独特の空間です。家族が集まるコミュニケーションの場や、お庭の綺麗な風景を眺めながら、四季の移り変わりを感じられる癒しの空間にもなります。
縁側を覆う軒は、夏の直射日光を受け止めて室内の温度を抑えてくれます。逆に冬には、太陽光を室内へと取り込んでくれます。その結果、室内を温かくしてくれ、優れた効果を発揮してくれます。
2-2. 設備や機能を刷新できる
伝統的な日本家屋の魅力を維持しながら、現代風に住みやすく作り直すのが、古民家リノベーションです。
歴史ある家には、昔の職人さんの技術が息づいています。伝統的な匠の技に支えられた精緻な建築技術や、日本の和を象徴するデザインなどが施されています。そういった資産をできるだけ生かしながら、新たな価値を吹き込み、快適で長く住み継がれる形に再生します。
古民家リノベーションを支える技術には、「耐震補強」や「断熱性向上」、「バリアフリー」などがあります。
3.古民家リノベーションの具体的事例
3-1. 山口県の明治の醤油会社がサテライトオフィスに
明治維新の礎となった歴史の街である、山口県萩市。今、この地で「萩まちじゅう博物館構想」が進められています。この萩市の想いに共感し、地域の企業として参加したのがリコージャパンです。
明治43年(1910年)に設立された醤油会社の半分をリノベーションし、サテライトオフィスとして生まれ変わりました。
3-2. 富山県の築120年の古民家がアートホテルに
2022年に富山県砺波市にオープンした1日3組限定のアートホテルが、楽土庵です。築120年の古民家を再生し、イタリアンレストランが併設されています。
この場所には稲作農村形態「散居村」があり、日本の農村の原風景といわれています。楽土庵では、空間だけでなく、アートやアクテビティ、料理を通じて里山経験ができます。砺波は、国の重点里地里山に選定されています。
3-3. 本州最南端串本に誕生したNIPPONIA HOTEL
本州最南端にある黒潮の恵みに育まれた海辺の街、串本。熊野街道は、歴史的に太平洋を行きかう船の経由地として栄えてきました。また、東京から2時間で訪れることのできる隠れた日本の名所でもあります。
このNIPPONIA HOTELのコンセプトは、「街全体をホテルに」というものです。串本の街での新しくも懐かしい、非日常の体験を蘇らせています。日本の起源を知る熊野古道や懐かしい日本家屋で、「日本の起源を知る」旅が体験できます。
4.古民家リノベーションの費用相場とポイント
4-1. リノベーションの費用相場
古民家のリノベーション(リフォーム)では、内装や水まわりの交換、耐震・断熱の向上、間取りの変更が行われます。また基礎の補強や、バリアフリーが施工されることもあります。こういった大規模な工事になるため、工事費用相場は1,500万円前後になります。
4-2. より快適になるポイント
例えば、古民家の間取りは襖などで細かく区切られています。そのため、現代の暮らしに合わせた間取り変更が必要になります。例えば襖を開ければ全てつながる古民家ですが、間取りと建具を活用してプライベートルームを確保することができます。
また古民家は土間と居室の間に段差があることが多いので、土間とは別の出入り口を作るという方法があります。そうすることで、外から直接居室へ行けるようになります。
4-3. 近年注目される古民家の免震力
古民家と現代住宅は、同じ木造軸組工法であっても構造は異なります。現代の家の工法は、「在来工法」と呼ばれています。具体的には、「筋交い」を入れ、「金物」と呼ばれる金属パーツとボルトで固めます。また土台もコンクリートに金物を入れて固めます。
一方古民家の工法は、「伝統構法」と呼ばれます。この工法では木材を縦横に組んで、木材同士を繋ぎます。そこには、「仕口」「栓」「継手(つぎて)」といった技術が使われています。コンクリートの基礎はなく、建物の柱が石の上に乗っています。
では、なぜ古民家は今までの大きな地震を乗り越えることができたのでしょうか。その理由は、「免震」という手法です。免震とは、地面と家を切り離し、地震の力を逃がす手法です。
近年、この古民家の免震力が注目されつつあります。例えば、「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験 検討委員会」があります。この委員会が2011年に実施した伝統構法の震動台実験では、建物に地震力が伝わっていないことがわかります。
5.最後に
古民家リノベーションは、日本家屋の良さを生かしながら付加価値を与えることで、その存在価値を蘇らせることができます。
匠の技術が施された高品質で貴重な建材を生かしながら、耐震性や断熱性を向上させることもできます。
また地元の名産や歴史、里山体験などを組み合わせることで、貴重な体験ができる非日常体験旅行サービスも提供できます。そういう意味では、日本家屋の再生にとどまらず、地域の活性化や日本文化の再評価にもつながる効果があります。
本ブログでは、今後もユニークな情報を発信していう予定です。