古民家とは?日本の伝統美を再認識させてくれるポイントや用語を解説

古民家について解説しています。
 

古民家が、最近注目を浴びています。例えばテレビや新聞等では、古民家を住み継ぐ地域プロジェクトなどがたくさん紹介されています。

古民家を再生してカフェやホテルにしたり、地域の歴史や観光名所と組み合わせた旅行サービスも誕生しています。また、古民家をリノベーションして暮らす方も増えています。

本記事では、古民家について詳しく解説します。

 

1. 古民家について

 

1-1. 古民家の定義

古民家は、築年数が相当経っている日本の住居で、目安としては建築後50年以上経過した建物を指します。例えば国が制定する文化財登録制度では、築後50年以上の建築物が対象です。

また一般社団法人全国古民家再生協会は、「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた『伝統的建造物の住宅』すなわち伝統構法とする」と定義しています。

1-2. 建築方式

古民家の建築方式は、釘などを使わない伝統的日本建築を特定することが多いです。近年は、日本古来の伝統的軸組工法の合理性、耐久性が見直されつつあります。

日本の伝統構法は、大まかに言うと西洋建築学の影響を受ける以前の日本建築です。その最大の特徴は、「木の特性を活かし、木と木を組み上げて建物を構成する」というものです。そこには自然と共生する価値観や、多様で不揃いな自然素材を上手に活かす高度な知恵や工夫が見られます。

具体的なポイントとしては、まず基礎部分は自然石の礎石の上に柱を立てています。また柱や梁、桁、貫などの垂直・水平の直線材で構造されています。しかし、筋交や火打といった斜めに設置する構造材は使用していません。

古民家が、長い歴史の中で地震に持ちこたえてきた理由は何でしょうか。その秘密が、「総持ち(そうもち)」という考え方です。これは、地震時に数百ある木材同士が「摩擦」「めり込み」「粘り」を活かして変形します。その結果、地震のエネルギーを吸収して復元力を発揮するというものです。

1-3. 建築様式

古民家の建築様式には、「農家」「庄屋屋敷」「一般民家」「商家」「武家民家」「建家屋敷」などがあります。それらは、使用目的や時代、地域、気候条件などによって異なります。

また白川郷・五箇山などに見られる多層階建ての合掌造りや、東北地方にみられる曲屋など、特殊な民家も見られます。

1-3. 屋根の種類

古民家の屋根は、茅葺(かやぶき)が多いですが、草葺などもあります。茅(ススキやチガヤ、ヨシ(アシ)などの総称)を屋根材にして家屋の屋根にしたのが、茅葺き屋根といいます。

茅葺は「伝統建築工匠の技」の一つとして、2020年11月17日ユネスコ無形文化遺産に登録されました。

1-4. 使用されている木材

古民家に使われている木材は、適材適所が採用されています。具体的には、腐りやすい部分には欅、栗、檜などが使用されています。また梁には強度の高い松、内装には杉などの目に優しく木目の美しい木材が使われています。

このように木材の種類ごとの特性を活かした使われ方をしているので、メンテナンスをすれば、古民家は200年から300年は持つといわれています。

 

2. 古民家マメ知識

 

2-1. 古民家再生・古民家リノベーション・古民家リフォーム

一般的に、古い梁や柱を活かし、伝統構法を用いて屋根や間取り、土台などを大幅に作り替えるのが古民家再生です。また大幅に構造材を変更せずに部分的に改修するのが、古民家リノベーション、古民家リフォームといわれています。

2-2. 大黒柱

古民家の大黒柱は、欅(ケヤキ)がよく知られています。例えば、古い旧家の大黒柱が黒光りするほど磨かれているのを、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。これは、荏油で何度も何度も磨かれ、手入れされた証です。

もともと大黒柱は、家の象徴としての役割を持っていました。当時は、最初に大黒柱を建ててからお建前を行いました。例えば、 玄関の土間を入ると大黒柱を斜めから眺められるように配置されているのもそういった背景があるからです。

2-3. 梁(はり)

古民家には、日本の伝統技術が息づいています。梁(はり)も、そのうちの一つです。梁とは、地面に対して水平に架けられる部材のことです。屋根や床を支える重要な構造材で、同時に柱と柱をつなぎ、柱を安定させる機能も持っています。

例えば、弓のように曲がった梁が古民家では多く見受けられます。これは、木材の曲がっているほうを上にすると強度が増すために使われています。このように、曲がろうとする力と曲がるまいとする力が拮抗し、建物のバランスを保っています。

2-4. 貫(ぬき)

貫(ぬき)とは、柱や束を貫いて固定する薄くて幅の狭い板材のことです。例えば、真壁造りなどに使用されます。具体的には、 柱を貫通させるものと、柱ごとに差し込むものがあります。

2-5. 御神木(ごしんぼく)

神木(しんぼく)とは、古神道における神籬(ひもろぎ)としての木や森をさし、神体のことです。一般的には、神社や神宮の境内にある神体としての木や、神聖視される木、その周りを囲む鎮守の森、伐採をしないとされる木を指します。

古民家の中には、敷地内に御神木があるものもあります。御神木は、杉や梛(なぎ)、榧(かや)、楠(くす)、檜(ひのき)であることが多いです。いずれの木も、大樹になります。

 

3. まとめ

 

古民家は、建築物という側面だけでなく、私達日本人の伝統文化が詰まった文化遺産という側面もあります。

西洋建築に囲まれた現代において、これだけの年月を経て生き残っている古民家の耐震性は、再注目する価値はあるでしょう。また場所ごとの木材の選定と活用、匠の技術も、奥深いものがあります。

本ブログでは、古民家の文化的側面や技術的側面も、掘り下げて情報発信していきます。