ワーケーションとは

ワーケーションとは?経費の解説やおすすめスポットもご紹介します

ワーケーションの様子

近年、ワーケーションは注目されている働き方です。本記事では、実際にワーケーションを導入するメリットや、注意すべきこと、経費にできる項目など、挙げていきます。有名事例4選を紹介しており、大手コンサルティング企業における地域貢献型ワーケーションの事例もでてきています。総務部・人事部担当者の方が、社員の人間力向上を促すワーケーションの実施方法も解説しております。

1.ワーケーションとは

1-1. ワーケーションの定義

「ワーケーション」とは、「ワーク(=work)」と「バケーション(=vacation)」を掛け合わせた造語で、新しい働き方です。
例えば会社のオフィスを離れ、観光地やリゾート地、旅行先や帰省先でリフレッシュしながら仕事を進めるという働き方です。
観光庁によると「テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、自分の時間も過ごすこと」と定義されています。

「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー (観光庁)

https://www.mlit.go.jp/kankocho/workation-bleisure/

1-2. ワーケーションの種類

ワーケーションには、「業務型」と「休暇型」の2タイプがあります。

1-2-1仕事をメインとした「業務型」

「業務型」は、仕事をメインとしたワーケーションで、仕事の休憩時間や、就業時間の前後に休暇を楽しむ形態になります。いつものオフィスとは違う非日常的な空間で、心身ともにリフレッシュしながら、仕事に取り組むことができます。
例えば、里山の一棟貸切施設にこもると、都会では感じることがない五感が刺激されて、新たな発見が生まれたり、周りの環境に邪魔されることがないので、集中力が増し、効率化に繋がります。日常の喧騒を離れ、地域の食材を作った料理を食べたり、夜は満点の星空や虫の声に癒さたりと、地域ならでは体験をすることが出来ます。

「業務型」を更に細分化していくと、「地域課題型」「合宿型」「サテライトオフィスオフィス型」の3つのタイプがあります。

❶「地域課題型」
社員と地域の関係者が交流し、一緒に地域の課題を解決していきます。地域との交流を通じて、新しい事業が生まれたり、体験を通じて社員が成長出来る特徴があります。

❷「合宿型」
観光地やリゾート地、旅行先や帰省先など、普段のオフィスから離れてグループワークや研修、ワークショップなどを行います。部署間の交流や、コミュニケーションの活性化、新規事業の会議など、個人ではなく、社内で目的を持って、集団で取り組むのが合宿型の特徴です。

❸「サテライトオフィス型」
企業が保有、契約しているサテライトオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースなどを利用してテレワークを行うことを指します。社員がオフィスや自宅とは別の場所で仕事をしたいといった潜在的なニーズがコロナ禍以降、多く生まれています。場所は都市部や、自宅近くの近郊、地方部などが挙げられます。近年は、都市部の企業が、地方の誘致を受けてサテライトオフィスを設けている企業も多くあります。また、自社で保有しているサテライトオフィスの他に、法人契約するシェア型も増えています。

コロナ禍以降は従来の働き方と大きく変わりつつあり、新たな働き方として注目を集めています。

1-2-2 思い出作りもできる「休暇型

「休暇型」は、福利厚生の一部として導入されています。観光地やリゾート地、地方などに滞在し、有給休暇を組み合わせながら休暇と業務のバランスを取ることが出来ます。
長期の休暇と合わせたり、親子でワーケーションを楽しんだりとさまざまな組み合わせ方ができます。親子でワーケーションを行う場合、日中の仕事の合間に子どもと地域を散策したり、業務が終わった後は、アクティビティを一緒に体験したりと家族との思い出作りが増えます。その土地ならではの出会いや体験は、日常と違う風景や文化に触れることができ、親子ともに有意義な時間を過ごすことが出来ます。

有名事例を含めながら第2章で詳しく説明していきます。

1-3. ワーケーションが注目されている背景

はじめに、日本でも働き方改革のニーズが高まり、2017年頃に労働基準法で有給休暇が保証されますが、取得率は依然として低くありました。2018年には働き方改革関連法案が成立し、従業員に対して、5日間の有給休暇取得が義務付けられました。この法案がワーケーションの普及の契機となっています。実際に、パーソル総合研究所がおこなった2023年の定量調査によると、ワーケーションで地域に滞在すする期間中に、有給消化した割合は44%で、通常の観光時の34.7%よりも高い数値が出ています。

パーソル総合研究所 「ワーケーションに関する定量調査」

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/workcation.html

次に、新型コロナウィルスが流行し、多くの企業がテレワークを導入したことにより、働き方改革が一気に浸透しました。コロナ禍で観光業界は衰退しましたが、その影響で、地域活性化を目指す自治体も増加しました。ワーケーションの推進を行うことによって、地方自治体は企業の誘致を行い、観光業界は地域に人が流れることによって、いずれも恩恵が受けることができます。また、社員の働き方の柔軟性が増えたことや、地方自治体が地域の活性化の実現に向けて努力することで、一気に注目を受ける流れとなったのです。

2.ワーケーション有名4事例

2-1ユニリーバ・ジャパン/地域課題型ワーケーション(業務型

2016年7月に働く場所や時間を社員が自由に選べる新しい働き方「WAA」を導入しています。「WAA」の働き方が地域活性や地方創生と親和性が高いことから、会社として8つの自治体と連携し、「地域 de WAA」の取組みを行っています。自治体の指定する地域課題の解決に貢献する活動に参加することで、宿泊費の無料または割引となります。プログラムとして、社員が小学校に赴き授業を行ったり、市役所の職員向けにコミュニケーション研修を行ったり、さまざまな知識や知恵を活かして地域貢献を行っています。活動に参加した社員も地域との方との人材交流を図ることにより、新たな発見やアイデアが生まれ、新しいビジネスに繋がることもあります。

2-2野村総合研究所・日本航空/合宿型ワーケーション(業務型

野村総合研究所:年3回の15~16人が参加するキャンプを徳島県三好市で行っています。業務的なモチベーションの維持や、働く環境を変えることにより新たな発見や創造力を付けることが目的です。

日本航空:滞在先で集討議する「合宿型ワーケーション」を徳島県神山町や宮城県鳴子温泉、福岡県福岡市、富山県朝日町などで行い、北ではビール醸造体験、愛媛県では農業体験など、ワーケーションとアクティビティを融合し、地域で感性を養い、自己成長へ繋げる取り組みを行っています。

2-3三菱地所/サテライトオフィス型側ワーケーション(業務型

宿泊機能のあるコワーキング施設を全国に13店舗展開しています。コワーキング施設では、地域のコミュニティマネージャーと行う企画や交流などがあるのが特徴です。コロナ禍で在宅勤務が増え、自由な働き方は、就活の学生に人気を集めています。

2-4日本航空株式会社/福利厚生型ワーケーション(休暇型

2015年より働き方改革が推奨され、現場社員の有給休暇は進んでいましたが、間接部門の社員は有給休暇の取得率が低いままでした。その対策として、2017年より休暇利用中に仕事を行うテレワークを可とする「休暇型」のワーケーションを導入しています。長期休暇を取ることによる抵抗感や、復帰後の業務量が増えることへの不安を軽減することができ、結果として間接部門の社員の有給休暇取得率が向上しました。有給休暇を活用してリゾートや観光地等でテレワークを行う福利厚生型のワーケーションスタイルが中心であり、休暇目的の位置付けのため、移動費や宿泊費などの費用は社員自身が負担することになっています。

日本航空と株式会社NTTデータ経営研究所が効果検証実験を行ったところ、ワーケーション中に仕事のストレスが37.3%減少し、生産性は20.7%向上していることがわかっています。

3.ワーケーションのメリット

3-1. 企業側

ワーケーションを導入することによって得られる企業側のメリットは以下の通りです。

  • 有給休暇の取得率アップ
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • 離職率の防止
  • 生産性の向上

働く場所や時間の制約がないので、社員は会社から信頼されていると感じ、従業員のエンゲージメント上昇が期待できます。この効果は、企業イメージの向上に寄与し、離職率の防止や採用強化にも繋がります。

3-2. 従業員側

ワーケーションを導入することによって得られる従業員側のメリットは以下の通りです。

  • 長期休暇が取得しやすくなる
  • 働き方の選択肢が増える
  • ストレスの軽減につながる
  • モチベーションアップ
  • 新しいアイディアが生まれる

社員は休暇を取りながら仕事をするため、休息の時間が生まれます。そのため仕事に対するストレスの軽減や、リフレッシュに繋がります。いつもと違う環境で仕事をすることによって、モチベーションのアップや新しいアイディアも生まれやすくなります。

3-3. 地域側

ワーケーションを導入することによって得られる自治体側のメリットは以下の通りです。

  • 交流人口・関係人口の創出
  • 地域課題解決のリソース獲得
  • 観光および雇用の創出

ワーケーションの利用者は地元の方と交流が出来ます。これらは、地域の課題解決や活性化に繋がり、観光業が盛んになったり、地域の雇用が創出されることにも繋がります。獲得しにくい平日の観光が増えたり、長期滞在をする人も増えるため、地域に売り上げを貢献するからです。

4.ワーケーションの注意すべき点

4-1. 環境整備

ワーケーションの滞在先が、サテライトオフィスやシェアオフィスなど利用するなら問題ないかもしれませんが、仕事をする環境が整っているとは限りません。ネット環境があるか、業務に支障がないデスクやイスかなどワーケーションを導入する際は、確認しておくポイントです。

4-2. セキュリテイ体制

社外にパソコンを持ち出すため、セキュリティ漏洩のリスクがあります。企業の信頼に関わることなので、働き方を導入したものの情報漏洩しては元も子もありません。社内でもシステムのセキュリティ強化や外部監視ツールの導入、社員への研修などの啓蒙など、セキュリティに対して意識して取り組むことが大切です。

4-3. ONとOFFの切替え

仕事をしながら休暇を取るワーケーションはどうしてもメリハリがつけづらいことが挙げられます。業務時間中にダラダラと過ごしてしまったり、集中力が切れてしまったりするため、時間を決めて業務に取り組むことが有効と言えます。

5.ワーケーションにおける費用について

5-1. 経費の扱い(企業)

ワーケーションの費用を経費として申請できるかどうかについては、一つの指標として業務を行うために必要であるかどうかです。業務に必要不可欠なネット環境などは経費として申請することが出来ます。一方で、休暇を兼ねて旅行先で行うワーケーションは、一般的に移動費や宿泊費などは経費として申請することが出来ません。会社の規定によるものではありますが、判断基準としては、業務上必要であるか、私的な目的ではないか、が判断基準となります。以下は経費として計上できる項目を挙げていますので、参考にしてみてください。

経費として計上できる主な項目

旅費交通費:バスや電車などの交通費や宿泊費 
接待交際費:交際費、接待費、機密費その他の費用 
通信費  :仕事で使用する連絡や通信に関わる費用 
図書新聞費:仕事に関する書類や雑誌、新聞代など 
消耗品費 :仕事で使用するための消耗品の購入代

5-2. 経費の扱い(個人事業主・フリーランス)

個人事業主やフリーランスについては、税務上、ワーケーションの費用が経費として認められるのは比較的難しいと考えられます。ワーケーション先で働く必要がない場合、例えば、気分転換のためなどの理由では、ワーケーションに係る費用として計上するのは難しいと考えられます。

5-3. 使える補助金

旅行や気分転換などを兼ねたワーケーションは、目的や滞在方法によって「自腹」になりますが、自治体によってワーケーション関連の補助金制度を設けています。
以下は各自治体の一部事例ですので、ワーケーションの場所を選ぶ際に参考にしてみてください。

福島県  
30日以上90日以内の滞在で30万円
6日以内の滞在で1万円/泊 
企業・個人ともに対象

山梨県 
滞在時間によって条件金額が異なる 
1法人25~100万円

奈良県 
レンタカー1泊に対して2000円(上限1万円)

島根県 
対象要件を満たす場合、通信環境整備費として上限8万円 
12カ月を上限とした通信費、シェアオフィス使用料、出張交通費

6.おすすめのワーケーション場所

6-1. 温泉でリフレッシュできる旅館

箱根湯本温泉 吉池旅館

https://www.yoshiike.org/

仕事で疲れた体を温泉に浸かって癒されること間違いないです。翌朝はまた朝風呂でリフレッシュし、気持ちを切り替えて仕事に取り組めます。

6-2. ビーチリゾートホテル

カヌチャリゾート沖縄

https://www.kanucha.jp/

日本航空が沖縄県のカヌチャリゾートでワーケーションの効果検証実験を実施しました。解放感のある海を目の前に、仕事の合間にほっと一息、景色に癒されること間違いないです。

6-3. 自然豊かな里山にある古民家宿

「カクレバ」星と風の庭

自然豊かな人里離れた古民家宿は、五感が刺激すること間違いないでしょう。夏には虫の声が響き渡り、風の音や、冬は雪が降り積もる音は都会では聞くことができないでしょう。

7.まとめ

ここまでざっとワーケーションについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
従来、ワーケーションのイメージは、一人で地方部に行き、業務をしながら休暇を取り入れることを想像した方もいるのではないでしょうか。今では、大手企業を含め、率先してワーケーションを導入している企業も増え、企業・従業員・地方ともにメリットがある働き方といえるでしょう。コロナ禍以降は、働く場所に対する固定概念が変わり、大きく揺らいだといえます。そんな中、導入のハードルが高い企業にとっても、シェア型を利用することで、導入のハードルがぐっと下がります。
日本の人口減少・地域過疎化はますます広がっていき、地域課題は大きな問題となっています。地域でのワーケーションは、今後ますます需要が上がっていくことが予想されるでしょう。